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高知地方裁判所 昭和55年(わ)110号 判決

国籍

韓国(慶尚南道陜川郡伽面黄山里五四八番地)

住居

高知市南ノ丸町一八番地

パチンコ店経営

山本松盛こと韓松盛

西暦一九三六年四月二七日生

国籍

韓国(慶尚南道陜川郡伽面黄山里五四八番地)

住居

高知県土佐市高岡町甲二、一三四番地

パチンコ店経営

山本松出こと韓松出

西暦一九四一年二月一日生

国籍

韓国(慶尚南道陜川郡伽面黄山里五四八番地)

住居

高知市南御座二番地

焼肉店経営

山本文吉こと韓文吉

西暦一九四八年九月三日生

右の者等に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官真鍋忠敬出席の上審理を遂げ次のとおり判決する。

主文

被告人山本松盛こと韓松盛を懲役一年二月及び罰金一、五〇〇万円に、

同山本松出こと韓松出を懲役八月及び罰金六〇〇万円に、

同山本文吉こと韓文吉を懲役六月及び罰金四〇〇万円に各処する。

被告人等において右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

被告人等三名に対し、この裁判確定の日からそれぞれ三年間右各懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告人山本松盛こと韓松盛は、高知市南ノ丸町一八番地に居住し、高知市及びその近郊においてパチンコ店「セントラル」、「セントラル山田」、「平和会館安芸」を経営しているものであるが、所得税を免れようと企て、

一、昭和五一年中における総所得金額は九、六〇六万二、二二二円、短期譲渡所得は六九万八、六〇〇円で、これらに対する所得税額は五、七一三万八、四〇〇円であったのにかかわらず、売上の一部を除外し、よって得た収入を架空名義の預金とする等の行為により所得を秘匿したうえ、同五二年三月一二日高知県安芸市矢の丸四丁目五番地所在の安芸税務署において、同税務署長に対し、自己の名義で総所得金額は五〇〇万円であってこれに対する所得税額は五六万三、九〇〇円である旨、また実母山本すみ子こと裵壬連名義で総所得金額が一五〇万円であってこれに対する所得税額は一〇万八〇〇円である旨、分散した虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税五、六四七万三、七〇〇円を免れ、

二  同五二年中における総所得金額は四、二五九万九、四八六円で、これに対する所得税額は一、九五三万七、三〇〇円であったのにかかわらず、前同様の行為によって所得を秘匿したうえ、同五三年三月一五日同県吾川郡伊野町幸町五番地所在伊野税務署において、同税務署長に対し、自己の名義で総所得金額は五六〇万円であってこれに対する所得税額は六六万七、八〇〇円である旨、また前記裵壬連名義で総所得金額が一五〇万円であってこれに対する所得税額が九万三、〇〇〇円である旨分散した虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一、八七七万六、五〇〇円を免れ、

三  同五三年中における総所得金額は三、七三四万四、八九七円で、これに対する所得税額は一、六一八万五、六〇〇円であったのにかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿したうえ、同五四年三月六日前記伊野税務署において、同税務署長に対し、自己の名義で総所得金額は六六〇万円であってこれに対する所得税額は九二万四、〇〇〇円である旨、また前記裵壬連名義で総所得金額が二〇〇万円であってこれに対する所得税額が一六万四、二〇〇円である旨分散した虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一、五〇九万七、四〇〇円を免れ、

第二  被告人山本松出こと韓松出は、高知県土佐市高岡町甲二、一三四番地に居住し、パチンコ店「セントラル瀬戸」を経営しているものであるが、所得税を免れようと企て、

一  昭和五二年中における総所得金額は四、四四一万七、九一七円で、これに対する所得税額は二、〇一四万二、六〇〇円であったのにかかわらず、売上げの一部を除外し、よって得た収入を架空名義の預金とする等の行為により所得を秘匿したうえ、同五三年三月一五日前記伊野税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は三四五万円であってこれに対する所得税額は一五万九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一、九九九万一、七〇〇円を免れ、

二  同五三年中における総所得金額は二、五九〇万八、二〇一円で、これに対する所得税額は八六六万円であったのにかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿したうえ、昭和五四年三月六日前記伊野税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は四一〇万円であってこれに対する所得税額は二六万六、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税八三九万三、三〇〇円を免れ、

第三  被告人山本文吉こと韓文吉は、高知市南御座二番地に居住し、焼肉店「天下味」を経営しているものであるが、所得税を免れようと企て、

一  昭和五一年中における総所得金額は一、六五四万八九九円で、これに対する所得税額は四六〇万七、五〇〇円であったのにかかわらず、売上げを架空名義の預金とする等の行為により全所得を秘匿したうえ、所得税の確定申告期限である同五二年三月一五日までに所轄高知税務署長に対し、確定申告書を提出せず、もって不正の行為により右同額の所得税を免れ、

二  同五二年中における総所得金額は一、八四二万五〇七円で、これに対する所得税額は五三五万五、三〇〇円であったのにかかわらず、前同様の行為により全所得を秘匿したうえ、所得税の確定申告期限である同五三年三月一五日までに所轄税務署長に対し、確定申告書を提出せず、もって不正の行為により右同額の所得税を免れ、

三、同五三年中における総所得金額は二、五八七万四、七五七円で、これに対する所得税額は九二二万一、六〇〇円であったのにかかわらず、前同様の行為により全所得を秘匿したうえ、所得税の確定申告期限である同五四年三月一五日までに所轄高知税務署長に対し、確定申告書を提出せず、もって不正の行為により右同額の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示第一の事実(被告人山本松盛こと韓松盛関係)につき

一、同被告人の当公判廷における供述

一、大蔵事務官(国税査察官)作成の告発書(昭和五五年二月二九日付)

一、同作成の査察官調査書六冊(同年一月八日付)

一、同作成の査察官報告書(昭和五四年五月一四日付)

一、上申書二通(高知相互銀行山田支店長及び四国銀行山田支店長-「証拠等関係カード」番号110のもの、各作成)(以下それぞれ高知相互、四銀と略記)

一、証明書六通(高知信用金庫-以下高知信金と略記-下街支店長、同安芸支店長、同須崎支店長、高知相互須崎支店長、同山田支店長、四銀山田支店長各作成、但し高知信金下街支店長作成の分は同番号98のもの)

一、工事契約書(写)(株式会社亜暉建設代表取締役作成)

一、同被告人作成の上申書及び給料、賃金上申書

一、山本愛子こと盧愛子の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一、山本敏子こと柳敏子、朴定圭、有光敬三、氏原忠博の大蔵事務官に対する各供述調書

一、被告人山本文吉こと韓文吉の大蔵事務官に対する供述調書(昭和五四年五月一八日付)

一、被告人山本松盛こと韓松盛の大蔵事務官に対する各供述調書(同年五月八日付、同月一八日付、六月七日付、一一月一六日付、昭和五五年一月二一日付)

判示第一の一の事実につき

一、大蔵事務官(国税査察官)作成の脱税額計算書(昭和五一年度分)

判示第一の二の事実につき

一、前同様の脱税額計算書(昭和五二年度分)

判示第一の三の事実につき

一、前同様の脱税額計算書(昭和五三年度分)

判示第二の事実(被告人山本松出こと韓松出関係)につき

一、同被告人の当公判廷における供述

一、大蔵事務官(国税査察官)作成の告発書(昭和五五年二月一九日付)

一、同作成の査察官調査書二冊(同年一月八日付)

一、証明書五通(高知信金瀬戸支店長、同大正支店長、土佐信用組合代表理事、四銀高岡支店長作成、大正支店長作成の分は二通)

一、同被公人作成の給料、賃金上申書

一、山本豊こと韓豊の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一、同被告人の大蔵事務官(七通、昭和五四年五月八日付、同月一〇日付、六月五日付、八月一日付、同月二三日付、一一月一五日付、同月一六日付)及び検察官(二通)に対する各供述調書

判示第二の一の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五二年度分)

判示第二の二の事実につき

一、前同様の脱税額計算書(昭和五三年度分)

判示第三の事実(山本文吉こと韓文吉関係)につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、大蔵事務官(国税査察官)作成の告発書(昭和五五年二月一九日付)

一、同作成の査察官調査書二冊(同年一月八日付)

一、定期預金に関する上申書二通(高知信金潮江支店長作成)

一、証明書三通(四銀下街支店長、高知信金潮江支店長-同番号117のもの、同下街支店長-同番号133のもの、各作成)

一、上申書二通(大宝酒類販売株式会社代表取締役、日本冷蔵株式会社高知工場長各作成)

一、同被告人作成の預金に関する上申書及び給料・賃金上申書

一、山本朝子こと韓朝子の大蔵事務官(二通)及び検察官に対する各供述調書

一、被告人山本松盛こと韓松盛の大蔵事務官に対する供述調書(昭和五四年一二月六日付)(「証拠等関係カード」番号153)

一、被告人山本文吉こと韓文吉の大蔵事務官(昭和五四年五月八日付、同月一一日付、六月二八日付、一一月一五日付、一二月七日付、同月二二日付)及び検察官(二通)に対する各供述調書

判示第三の一の事実につき

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五一年度分)

判示第三の二の事実につき

一、前同様の脱税額計算書(昭和五二年度分)

判示第三の三の事実につき

一、前同様の脱税額計算書(昭和五三年度分)

判示全事実につき

一、大蔵事務官作成の差押てん末書七通及び領置てん末書八通

一、証明書三通(高知相互南支店-昭和五四年六月三〇日付、信用組合高知商銀理事長、中央食糧株式会社高知支店長各作成)

一、上申書二通(株式会社マエカワエアコン代表取締役、三商株式会社代表取締役各作成)

一、被告人等三名共同作成の頼母子講上申書、仕入、経費上申書、民間借入金上申書、減価償却資産上申書

一、野町融の大蔵事務官に対する供述調書

一、被告人山本松出こと韓松出の大蔵事務官(二通、昭和五四年一二月六日付-「証拠等関係カード」番号152、同月七日付)及び検察官(二通、昭和五五年二月二〇日付、三月七日付)に対する各供述調書

判示第一、第二の事実につき

一、愛媛相互山田支店長作成の上申書及び証明書

一、スズキハウス高知株式会社代表取締役作成の証明書

一、小笠原桂子の大蔵事務官に対する供述調書

判示第一、第三の事実につき

一、株式会社誠和代表取締役作成の証明書

判示第二、第三の事実につき

一、証明書四通(高知相互南支店-昭和五四年五月一〇日付、高知信金本店営業部長、同信金下街支店長-同番号99のもの、同信金潮江支店長-同番号106のもの、各作成)

(法律の適用)

被告人等三名につき

○ 所得税法第二三八条第一項(懲役刑と罰金刑の併科)

○ 刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(懲役刑につき、被告人山本松盛こと韓松盛については犯情最も重しと認める判示第一の二の罪の、同山本松出こと韓松出については犯情より重しと認める判示第二の一の罪の、同山本文吉こと韓文吉については犯情最も重しと認める判示第三の三の罪の各刑にそれぞれ法定の加重をする。)

○ 同法第四八条第二項(罰金刑につき)

○ 同法第二五条第一項第一号(各懲役刑につき刑の執行猶予)

○ 同法第一八条(罰金刑につき換刑処分)

(結論)

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 鍵山鉄樹)

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